「岩田さん」を読んだ(1年ぶり3回目)

今年はなるべく本をたくさん読みたいと思っており、新年最初の読書はなににしようかなと考えたけど、やっぱり「岩田さん」かなと思って、3回目の「岩田さん」を読んだ。

人を一番大事にしていた

岩田さんと言えば、MOTHER2のときの作り直しや、「プログラマーはノーと言ってはいけないんです」というような、エンジニアとしてのエピソードが強く印象に残りがちなんだけど、この本に書いてあることは、終始「人と人が働くということはどういうことか」に尽きるような気がする。

例えば、会社の中に評価などの軸を共通認識として持つことが必要だ、と語っている中で、岩田さんはこう言っている。

会社という組織の中でも、みんな、都合よく、自分の得意なことと、人の不得意なことをつい比較してしまう。P.46

だからこそ、軸がないと「不公平」という不満が生まれてしまう。その通りすぎて、うんうんと頷いてしまった。

また、もっと根本的な「働く」ということに対しても、自分が大好きな岩田さんの一節がある。

考えようによっては、仕事って、おもしろくないことだらけなんですけど、おもしろさを見つけることのおもしろさに目覚めると、ほとんどなんでもおもしろいんです。P.58

自分も、仲間も、お客さんも、みんながハッピーであることを願っていた岩田さんは、そもそも自分をハッピーにする術に長けていた。自分がハッピーじゃないと、一緒に働く仲間もハッピーにはなれないから。

岩田さんが人とコミュニケーションを取るうえで、絶対に他人を責めない、という考え方も、人と人が働く上では本当に大事なことなんじゃないかと思う。

プログラムの世界は、理詰めです。だから、もしも完動しないとしたら、原因は全部、プログラムしたこっちにある。わたしは、人と人とのコミュニケーションにおいても、うまく伝わらなかったらその人を責めずに、自分の側に原因を探すんです。コミュニケーションがうまくいかないときに、絶対に人のせいにしない。P.84

良いゲームをつくるためには、良いチームが必要で。そのためには、組織というものがどうあるべきか。自分がどう立ち回るべきか。その人の得意なことは何で、不得意なことは何か。人というものにフォーカスをあてて、岩田さんは働いていたんだなと感じた。

糸井さんに語った仕事観

岩田さんが、ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)の糸井さんに仕事観を語ったエピソードがあり、その内容が自分はとっても好き。

自分は、ほかの人がよろこんでくれるのがうれしくて仕事をしている。(中略)まわりの人がしあわせそうになるのが自分のエネルギーなんです P.119

それに対して、糸井さんが「オレもそうだ」と答える。

自分も声を大にして「オレもそうだ」と言いたい。

「できるんだ」っていう希望を与えられる存在

MOTHER2の開発がうまく進んでいないところに、岩田さんがやってきて、ものごとがうまく回りだすようになった。

そのことを糸井さんが、「希望を与えてくれた」と表現したことが、とっても印象に残っている。

そういうふうにうまく回りだしたのは、大きくいえばやっぱり、岩田さんがぼくらに希望を与えてくれたからですよね。「できるんだ」っていうね。P.195

自分は、こんなふうに希望を与えられる存在になっているだろうか。
「プログラマーはノーと言ってはいけないんです」というのは、希望を与えられる存在になれ、というメッセージだと思った。

3回目を読み終えて

やっぱり、何度読んでも素晴らしいなと思った。岩田さんの言葉に、救われるような感覚を、何度読んでも抱くのは、それだけ岩田さんが素晴らしい人だったということだろう。

自分は一時期、ほぼ日で働いていたことがある。岩田さんが亡くなった後だったので、岩田さんに会うことはできなかった。

だけど、糸井さんと働いたことはあるので、この本の中にいる岩田さんのいろんなところに、糸井さんの面影を感じた。あ、これは、糸井さんから学んで岩田さんが実践しているんじゃないかな、とか。あくまでも、自分の憶測だけれども。

岩田さんは、そんなふうに周りからどんどん自分の中に取り込んでいって、どんどん変わっていかれたんだじゃないかなと思った。

自分も、岩田さんを読んで、岩田さんをどんどん取り込んでいきたい。なかなか難しいところもあるけれど。忘れてしまわないように、きっと4回目を読む日がすぐに来ると思う。